請求、審査請求、再審査請求において、一貫して、初診日に被保険者でなかったことを理由としていたのに、訴訟になって、障害の程度が該当していないことを主張できるのかについては、「できる」としながらも、障害の程度においても該当しているとした例。
取消訴訟の訴訟物は,処分の違法一般であると解されるところ,一般に,取消訴訟においては,別異に解すべき特別の理由のない限り,被告は当該処分の効力を維持するための一切の法律上及び事実上の根拠を主張することが許されるものと解すべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第113号同53年9月19日第三小法廷判決・裁判集民事125号69頁)。
また,本件処分においては理由が示されているが,申請拒否処分において理由を示すべきものとされている(行政手続法8条)のは,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解され,その趣旨は,処分の理由を具体的に示して処分の名宛人に通知すること自体をもって,ひとまず実現され,この趣旨を超えて,一たび通知書において理由を示した以上,行政庁が当該理由以外の理由を取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨を含むとは解されない
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以上のとおり,本件処分は,原告が本件傷病の初診日において厚生年金保険の被保険者であった者に該当しないとした点において誤りがあるとともに,被告が本件処分が適法である根拠として主張する本件障害認定日及び本件裁定請求日における原告の障害の状態の点をみても,本件障害認定日における原告の障害の状態は,障害等級3級に該当する程度のものであったといえる。 令和2年6月5日
