精神科を受診せず保健センターでの相談記録から統合失調症の初診日を認定した事例

2 前記認定された事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 最初に、当該傷病の初診日は請求人の20歳未満にあったとする主張が妥当であるかどうかについて検討する。
 精神病の場合、明らかな精神病の病態を示していない限り、当初から精神病院に受診することは極めて稀であり、さらに、患者本人が自らの意志で精神病院に受診することを求めるのは困難であると言わざるをえない。そして、統合失調症の初期症状は多様である。
 前記1の(1)、(2)及び(3)によると、請求人ないしその母は、特に複雑困難な状況にある精神障害者の相談指導を行っているセンターにおいて、医師の診察は受けていないものの、精神保健医療に関する専門家よる面接相談を昭和63年7月から同年10月まで6回受けており、この間家に閉じこもりがちで、一部行為障害もみられたが、請求人の当初来所時の昭和63年頃の状態については、センターのB医師が当該相談記録を検討した結果、この時点においては統合失調症に特異的な症状を明確に推測しうる記述はみられないとしている。しかしながら、前記1の(4)のとおり、その後の平成2年1月時点における請求人の来所時の当該相談記録によると、当該傷病の特徴を示す症状の発現が認められており、また、この点については、前記1の(5)のとおり保険者代表も認めているところである。
 したがって、当該傷病の発病・初診日は、請求人の20才到達前である平成2年1月時点とするのが妥当と判断する。

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