びまん性脱毛症の初診日が統合失調症の初診日であると認められた事例

2 以上の認定事実に基づいて、本件の問題点について検討する。
(1) 当該傷病の初診日について
 請求人が当該傷病の初診日と主張する平成3年8月19日は、びまん性脱毛症によって皮膚科の診療を受けた日であって、一般的に言えば、この傷病と診断された後、病状の進行によって当該傷病の確定診断に至るのが通常の事実推移の過程であるとまでいうことはできないから、この受診日があることから直ちに、これをもって当該傷病の初診日であると認めることはできない。しかしながら、請求人の上記びまん性脱毛症は不潔恐怖等の神経症的な精神症状に由来するものであることが窺われるところ、このような症状が当該傷病の前駆症状として現れることは往々みられるところであり、これに加えて、その当時から当該傷病と診断されるに至るまでの時期において請求人の生活態度に認められる精神的な偏りの持続、そのような時期を経て最終的には当該傷病と診断されていることから回顧的に見れば、上記びまん性脱毛症は当該傷病の前駆症状としての精神症状の発生を意味するものであったと推定するのが妥当である。この受診から当該傷病の診断が下されるまでには約8年の歳月が経過しているが、一般に、当該傷病の経過として、前駆症状の発生から確定診断に至るまでにこの程度の期間が経過することは希とはいえないから、この点も前記推定を妨げるものではない。
 以上の次第で、当該傷病の初診日は20歳到達前の平成3年8月19日と認められるから、本件では納付要件の具備を問題とする必要はない。

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