脳出血と高血圧の相当因果関係が認められなかった事例

上記認定した事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 社会保険庁では、国民年金法及び厚生年金保険法上の障害の程度等を認定する基準として「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下「認定基準」という。)を定めているが、給付の公平を期するための尺度として、当審査会もこの認定基準に依拠するのが相当であると考えるものである。
 認定基準の第1 一般的事項には、初診日及び相当因果関係について、次のように規定されている。
 初診日とは、障害の原因となった傷病について初めて医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の診療を受けた日をいい、具体的には次のような場合が初診日とされる。
[1] 初めて診療を受けた日(治療行為又は療養に関する指示があった日)
[2] 同一傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
[3] 障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日
 そして、ある行為(事象)からそのような結果が生じるのが経験上通常である場合に、両者の間には相当因果関係が認められ、相当因果関係のある前後の傷病は同一傷病として取り扱われる。
(2) まず、上記認定基準に照らして、請求人に係る高血圧の初診日(以下「当該初診日」という。)の検討をすると、請求人は、○○店勤務中の平成12年6月19日及び同13年4月21日に実施されたいずれの定期健康診断においても、標準値から乖離した高血圧が認められたものの、医師の診断・意見欄及び保健指導欄には療養に関する指示等の記載が認められない。
 ところで、請求人は、平成13年4月21日から数か月後の再測定時に、血圧が高く、病院への受診を勧められて食事療法等の指導を受けた旨を申し立てているものの、このことを証明するに足る客観的な資料の提出がない。したがって、この点をもって当該初診日を認定することはできない。
 しかしながら、請求人は、平成14年2月25日、E医院を受診して高脂血症、高血圧症と診断され、本態性高血圧症治療剤の投与を受けていることから、当該初診日は、平成14年2月25日とするのが相当であるところ、前記1の(7)で事実認定したところから、この日において、同人は厚生年金保険の被保険者ではなかった。
 以上みてきたように、本件の場合は、高血圧と当該傷病との間の相当因果関係の有無にかかわらず、請求人の当該傷病に係る初診日は平成14年2月25日以降となることから、平成13年7月12日以降に厚生年金保険の被保険者期間を有しない同人が、当該傷病の初診日において、厚生年金保険の被保険者であることは有り得ないこととなる。
(3) なお、前記1の(5)で事実認定したように、高血圧が脳出血の複数の危険因子のひとつであることは医学的に広く認められているところであるが、このことから、高血圧を呈する者が脳出血を発症することが、臨床経験上通常の事柄であることを意味するとは言えないことから、厚生年金保険法及び国民年金法の障害認定上、高血圧と脳出血の間の相当因果関係を認めることは困難であり、当該傷病の初診日は平成15年2月8日とするのを相当とすることを付言する。

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