網膜色素変性症の初診日についての考え方

2 前記認定された事実に基づき、本件の問題点を検討し、判断する。
(1) 障害の原因となった疾病が先天的なものである場合、その疾病が発症する以前であっても、将来発症するリスクの存在が医師の診療によって確認されればその時点を受給権発生の基準となる初診日とすることは、年齢又は適用事業所への就職により被保険者資格の取得を強制し、被保険者期間中に初診日があることを障害給付の要件とし、被保険者期間、保険料の納付記録を基に障害厚生年金の額を定める仕組みとなっている社会保険制度とは、整合性が取れないものである。そのため、前記第3の1の厚年法における初診日(国民年金法においても同じ。)は、上記リスクが顕現し、その疾病を発症して以降初めて医師の診療を受けた日と解される。
(2) 以上のことからすると、遺伝性、緩徐進行性の疾患で、夜盲、視野障害のような症状が最初に起きることが多く、その後病変が進行すると視力が低下する当該傷病の請求人に係る初診日は、前記1の(1)ないし(3)で事実認定したところから、平成12年7月28日と認めることができる。
(3) すると前記1の(4)から、当該初診日の前日において、初診日の前々月である平成12年5月までの請求人の被保険者期間217月中保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間は113月であり、また平成11年6月から同12年5月までの1年間のうち3月分が未納となっているので、前記第3の1の資格要件は満たすが保険料納付要件を満たさないことは明らかである。