相当因果関係、脳出血と高血圧、他

2 以上の認定事実に基づいて、本件の問題点について検討する。
前記のとおり、請求人は平成6年7月30日にD内科を受診したのが当該傷病の初診日であると陳述している。しかし、当時の請求人は高脂血症で受診したものであり、この高脂血症と当該傷病との間に相当因果関係を認めるべき根拠は見当たらないから、前記主張は採用することができない。このことは、平成10年に初診日のある高尿酸血症と当該傷病との関係についても同様である。
次に、請求人は平成7年5月にD内科で高血圧と診断されているところ、高血圧が当該傷病に対する有力な危険因子であることは一般に認められているところである。しかし、高血圧の患者が脳出血を起こすことが、経験上通常の成り行きであるとまでいうことはできないから、両者の間に相当因果関係があるということはできない。なお、E医師は、以上の疾病が当該傷病の発生に影響を及ぼした可能性があると述べるが、その根拠は具体的に明らかにされておらず、相当因果関係を肯定する趣旨のものとは認め難い。
次に、請求人のB病院における診療経過について見ると、まず、平成6年11月当時の診断においては、頭部の疾患は全く疑われておらず、回顧的に見ても、当時の左肘や指の症状が当該傷病と関係のあるものだったとは認め難い。また、平成9年8月の受診時には頭部の痛みを訴えているが、CT検査を行った結果、頭部には異常を認めなかったものであって、これまた、当該傷病と因果関係のある傷病であるとは断定できない。平成12年9月の受診時にも頭部の症状を訴え、同じくCT検査を行ったところ、脳梗塞の疑いという程度の診断であった。これを平成14年4月に発症した当該傷病の前駆的症状を意味するものと見る余地が全くないとはいえないにしても、当時すでに請求人は厚生年金保険の被保険者ではなくなっている。