第7節/肢体の障害

肢体の障害による障害の程度は、「上肢の障害」、「下肢の障害」、「体幹・脊柱の機能の障害」及び「肢体の機能の障害」に区分し、次により認定する。

第2下肢の障害

1 認定基準

下肢の障害については、次のとおりである。

令別表障害の程度障 害 の 状 態
国年令
別 表
1 級両下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両下肢の
用を全く廃したもの」という。)
両下肢を足関節以上で欠くもの
2 級両下肢のすべての指を欠くもの(以下「両下肢の10趾を
中足趾節関節以上で欠くもの」という。)
一下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一下肢の
用を全く廃したもの」という。)
一下肢を足関節以上で欠くもの
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする
病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい
制限を加えることを必要とする程度のもの
厚年令別表第13級一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残す
もの
一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
両下肢の10趾の用を廃したもの
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に
著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残す
もの
厚年令別表第2障害手当金一下肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残す
もの
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
長管状骨に著しい転位変形を残すもの
一下肢の第1趾又は他の4趾以上を失ったもの(以下
「一下肢の第1趾又は他の4趾を中足趾節関節以上で欠く
もの」という。)
一下肢の5趾の用を廃したもの
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を
加えることを必要とする程度の障害を残すもの

2 認定要領

下肢の障害は、機能障害、欠損障害、変形障害及び短縮障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3 大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
  (ア) 不良肢位で強直しているもの
  (イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2 分の1 以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
  (ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
   ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100 度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3 大関節中単にそれぞれ1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定する。なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
イ 「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3 大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。
  (ア) 不良肢位で強直しているもの
  (イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2 分の 1 以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
  (ウ) 筋力が著減又は消失しているもの
   ただし、膝関節のみが100 度屈曲位の強直である場合のように単に1 関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。
ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3 大関節中それぞれ1 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方  法」による参考可動域の2 分の1 以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。
  なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2 分の1 以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。
オ 「関節に著しい機能障害を残すもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の3 分の2 以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。
  (注) 関節に著しい機能障害がない場合であっても、関節に機能障害を残すもの(「関節の他動可動域が健側の他動可動域の5 分の4 以下に制限されたもの」又は「これと同程度の障害を残すもの(例えば、固定装具を必要としない程度の動揺関節、習慣性脱臼)」をいう。)に該当する場合は、第2 章「併合等認定基準(併合判定参考表の12 号)」にも留意すること。
カ 「足趾の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
  (ア) 第1 趾は、末節骨の2 分の1 以上、その他の4 趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの
  (イ) 中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1 趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害 (他動可動域が健側の他動可動域の2 分の1 以下に制限されたもの)を残すもの
  なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
キ 「身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3 大関節中1 関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3 大関節中それぞれ1 関節の筋力が半減しているもの)をいう。なお、両下肢に障害がある場合の認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して  日常生活における動作に制約  が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。
ク 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものについては、次により取り扱う。
  (ア) 一下肢の3 大関節中1 関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換
  したものや両下肢の3 大関節中1 関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。
 ただし、そう入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定する。
  (イ) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭又は人工関節をそう入置換した日(初診日から起算して1 年6 月以内の日に限る。)とする。
ケ 「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えること
  を必要とする程度の障害を残すもの」とは、一下肢に機能障害を残すもの   (例えば、一下肢の3 大関節中1 関節の筋力が半減しているもの)をいう。
コ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
  (ア) 片足で立つ
  (イ) 歩く(屋内)
  (ウ) 歩く(屋外)
  (エ) 立ち上がる
  (オ) 階段を上る
  (カ) 階段を下りる

(2) 欠損障害

ア 「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいう。
イ 「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいう。
なお、いずれも切断又は離断による障害の程度を認定する時期は、原則として、切断又は離断をした日(初診日から起算して1年6月以内の日に 限る。)とする。ただし、障害手当金を支給すべきときは、創面が治ゆした日とする。

(3) 変形障害

ア 「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)
(ア) 大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
(イ) 脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
 なお、いずれも運動機能に著しい障害はないが、大腿骨又は脛骨に偽関節を残すもの(「一下肢に偽関節を残すもの」という。)は、障害手当金(第2 章「併合等認定基準(併合判定参考表の8 号)」)に相当するものとして認定する。
イ 「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア) 大腿骨に変形を残すもの
(イ) 脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)
 ただし、変形とは外部から観察できる程度(15 度以上わん曲して不正ゆ合したもの)以上のものをいい、長管状骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえその部位に肥厚が生じたとしても、長管状骨の変形としては取り扱わない。

(4) 短縮障害

下肢長の測定は、上前腸骨棘と脛骨内果尖端を結ぶ直線距離の計測による。
ア ―下肢が健側の長さの4 分の1 以上短縮した場合は、「―下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして認定する。
イ 一下肢が健側に比して10 センチメートル以上又は健側の長さの10 分の1以上短縮した場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」に該当するものとして認定する。

(5) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。
ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については参考とする。なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位主要な運動
股関節屈曲・伸展
膝関節屈曲・伸展
足関節背屈・底屈
足指屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。
 ただし、両側に障害を有する場合には、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。
ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。
(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性
なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定する。